雨(あめ)とは、空から水滴が落ちてくる天候のこと。また、その水滴。
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詳しくは「降水過程」も参照
大まかな成因は次の通り。大気中に含まれる水蒸気が、気温が下がったり上昇気流に運ばれたりすることで凝結して、細かな水滴(雨粒)でできた雲となり、雲の中で雨粒が成長し、やがて大きくなった雨粒が地上に落下することで、雨となる。
一般的に、雨を降らせる雲は、気象学上乱層雲、積乱雲、層雲に分類される雲が多く、その他の雲は比較的少ない。雨雲の下端(雲底)の高さは実にさまざまだが平均的には約500m - 2,000m程度で、多くの雨粒はこの距離を落下してくる。落下距離が長くなったり、通過する大気中の気温が高いと、雨は落下する途中で蒸発してしまう。このときには、雲の下に筋状の雨跡を見ることができ、これを降水条や尾流雲と呼ぶ。
気象学的には、雨は降水現象の一つと位置づけられる。降水現象の中では最も頻度が高い。雨および降水現象は、地球上で水が循環する過程(水循環)の一部分に位置づけられ、生態系や地形といった地球の自然に深く関与している。
雨はその成因によって、具体的には雨粒が作られる時の上空の気温(氷晶になるかならないか)により、以下の2つに大別される。すべての雨は空気中の水蒸気を起源とする(気体である)が、それ以降、液体と固体の状態を経て降る雨が冷たい雨、液体の状態だけを経て降る雨が温かい雨である。
またごく稀に、冷たい雨の成立する環境下で上空に0℃以上の逆転層が存在する時、落下中は液体(過冷却)であるものの着地時に凍結して氷の層(雨氷)を形成する、着氷性の雨というものも存在する。
水蒸気が凝結してできた水滴が、気温0℃を大きく下回る空気の中に(上昇して)入って凍り、氷晶となって成長し、気温0℃を大きく上回る空気の中に(落下して)入って融け、降る雨。解けずに降れば雪など(その他に霰、雹が含まれる)になる[要出典]。
「気温0℃を大きく下回る空気」で凍るとしているが、実際の空気中では、気温が0℃を少し下回ったくらいでは凍結が始まらないことが多いためである。温度0℃以下で凍らない状態を過冷却と言う。
雲の中で一部の水滴が凍って氷晶になり始めると、まだ凍っていない過冷却の水滴は蒸発して氷晶の表面に昇華するため、急速に成長する。
氷晶が落下する途中で、気温が摂氏0℃より高い領域に達すると氷晶は融け始め、完全に融けると液体となり、雨粒となる。融けきれない場合は雪となる。地上の気温が摂氏2℃以上の場合、上空1500mで-6℃以上、または上空-5500mで-30℃以上で冷たい雨(または霙)である。
「気温0℃を大きく上回る空気」で融けるとしているが、これは、氷晶が0℃以上になっても、氷晶が昇華してその際に奪われる昇華熱により氷晶の温度が低下するため、0℃を数℃上回らないと完全に融けない。また、湿度が高いほどこのときの温度は低くなる。
日本の降雨の8割はこの「冷たい雨」の機構で起こるといわれている。
水蒸気が凝結してできた水滴が、水滴のまま成長し、そのまま降る雨。こちらは気温0℃以上の場合の現象であるが、0℃以下であっても水滴が過冷却のまま凍結しない場合もある。
湿潤な空気が上昇すると、断熱膨張により冷却が起こり、凝結高度に達すると過飽和の状態になる。この際、大気中のエアロゾルを凝結核として雲粒が成長する。この成長はゆっくりしたものであるが、雲粒同士の併合過程により、一部の雲粒が急速に成長して重力に耐えきれなくなるほど大きくなる。この併合過程は、海洋性の積雲の場合に急速に成長する条件が揃っている。
気候帯によって、雨の降り方は全くと言っていいほど異なる。
季節性で言えば、温帯の中でも夏に雨が多い温帯夏雨気候、冬に雨が多い地中海性気候もあれば、変化はあるが年間を通して一定以上の雨が降る温暖湿潤気候や西岸海洋性気候もある。温帯の特徴として、亜寒帯低圧帯に入ることが多いため移動性高気圧と温帯低気圧が交互にやってきて、低気圧やそれに付随する前線の通過に伴って雨が降ることが多い。また、亜熱帯高気圧に覆われる時期には雨が少ないが、赤道気団に由来するモンスーンの影響を受けるインド、東アジア(梅雨)など、顕著な雨季のあるところもある。亜寒帯でも同様に気候帯ごとに雨に季節性がある。
熱帯では熱帯収束帯の影響下にある時期に雨が降り、発達した積乱雲によってスコールと呼ばれる突風を伴った集中豪雨が降る。熱帯雨林気候では年間を通して雨が多く、サバナ気候や熱帯モンスーン気候では雨季と乾季がある。熱帯では年間の気温変化が大きくないので、気温よりも雨の変化が季節変化として重視される。
地球上の多くの場所で起こる気象現象であるが、雪しか降らない南極・北極や高山地帯などで夏でも気温が0℃以上にならないような極寒地域では雨が降らない。また、ステップや砂漠などの極端な乾燥地であっても、雨が全く降らない時期が数か月と続くことはあっても、全く降らないことはない。
雨滴(うてき)ともいう。雨水が軒などから落ちるのは雨垂れ(あまだれ)、雨だれが落ちて打ち当るところを雨垂落(あまだれおち)という。なお、雨によるものではないが、濃霧の時、森林の中で霧の微小な水滴が枝葉につき、大粒の水滴となって雨のように降り落ちる現象を樹雨(きさめ、きあめ)という。
温帯地方の雨の水滴の大きさは、通常0.1 - 3mm程度である。0.1mm以下の雨粒は雲の中の上昇気流によって落ちなかったり、落下中に蒸発してしまい、消えてしまうことがある。3mm程度以上の大きさの雨粒は途中で分解してしまうことが多い。そのため、熱帯地方の雨の水滴の大きさは、小さい雨が少なく温帯よりも大きいものの、3mmを大きく超えるような雨は降らない。
雨粒が空気中を落下するときの形は、雨粒が小さい場合は球の形をしているといわれている。雨粒が大きいときは、落下するときに空気に触れる下の面がやや平らになり、下が平らになった球の形をするとされている(参考)。
雨粒の落下速度は、雨粒の大きさによって変わる。小さい粒は空気抵抗によって遅くなるが、大きな粒はおおよそ毎秒9m程度である。また、落下時は、空気の抵抗によって雨粒は平らなまんじゅうの形になる。涙滴と思われていたのは、木の葉の先から露が落ちるときや、窓ガラスを伝う水滴が涙形をしているためである。1951年に北海道大学の孫野長治博士が空中を落下する雨粒の写真撮影に成功し、「まんじゅう形」を世界で初めて確認した。
雨粒の大きさと粒の数の関係は、1947年に、マーシャルとパルマーが1ページの論文の中で、「マーシャル・パルマーの粒径分布」として表せる、ということが発表された。実際には、全ての場合に適用できる訳ではないが、おおよそ指数関数的な分布になっている。
日本式の気象通報においては、水滴の大きさが直径0.5mm以上の場合を「雨」と呼ぶ。これよりも小さい場合は「霧雨」と呼び、天気記号も異なる。その他、時間雨量に換算して15mm以上の強度で雨が降る場合は「雨強し」、一過性の雨の場合は「にわか雨」に分類され、それぞれ天気記号が異なる。
詳細は「降水量」を参照
雨の強さは、単位面積に降った雨が溜まった深さで表す。通常は時間雨量(1時間あたりに溜まった深さ)をmm単位で表記するが、短時間の降雨の強さを表すために10分間雨量などを用いることもある。
気象庁では、時間雨量によって次のように分類している。
なお、降水が雨のみの場合は雨量と言い、雪や霰などの雨以外による降水も含めた場合は降水量と言う。
雨量の観測は雨量計、ある地点での雨の有無は観測者の目視・体感や感雨計、広域的な雨の分布はレーダーが適している。
降雨状況、あるいは降雨強度を知ることは、気象予報や災害対策に重要である。そこで、レーダーを使い、レーダーからの反射状況を見て、降雨状況を観測することが行われている。気象観測用のレーダーは特に気象レーダーと呼ばれることが多い。
雨の観測には、マイクロ波のうち特にセンチメートル波(SHF)と呼ばれる波長の電波が適している。
レーダーを使う場合、広い地域の降雨状況を観測することができる。個々の雨粒は、その直径の6乗に比例して電波を反射する。このことを利用して、降雨状況を調べている。強い雨には大きな雨粒が多いので、反射が強いと言うことは、大きな雨粒が多い、と言うことができる。ただし、反射強度と降雨強度は比例する訳ではなく、レーダーの観測状況から正確に降雨強度を求められないという問題がある。
一方雲の粒は雨粒に比べるとかなり小さい。そのため、直径の6乗に比例する反射強度にはほとんど影響しない。雲の状況を見るときには、雨の状況を見るときよりも波長の短い電波(ミリ波=EHF)を用いる必要がある。
さらに、雨粒以外のものによって、雨と誤解される状況が存在する。たとえば、鳥、昆虫などの小動物や空気の乱れなどが挙げられる。このような、雨でない観測結果を「エンジェルエコー」と呼ぶ。
生物にとって雨は、生存に必要不可欠なな水、しかも飲用に適した淡水を供給するという重要な役割をもつ。地上に生息する生物の多くは、雨が集まってできた水辺、地面にしみ込んだ後湧き出す泉やそれらが合流してできる川から生存に必要な水を摂取する。人間においても同様であり、海水淡水化施設を利用している一部を除けば、世界の水道水はほぼ雨に由来する淡水を利用している。
水力発電は雨水や雪解け水に由来する水の重力落下によって生じる運動エネルギーを電気として利用するものであり、海水の蒸発・雲の生成(凝結・凝固)・降雨といった自然のプロセスを復元力とした再生可能エネルギーである。
また、雨が地形に及ぼす作用は大きい。雨水が直接地形を削る浸食作用もある。降水量やその季節的な偏りは、植生を大きく左右する。
また、例えば雨で地面が濡れると地中からミミズが這い出てきて、それを狙って鳥が低空飛行するという風に、生物には雨が降るとき特有の生態も多々ある。
雨水は大部分が水であるが、微量の有機物、無機物、特に重金属類を含んでいる。これらは雲が発生する際、あるいは雨となって地上に落ちてくる際に、周囲の空気や土壌から集めてくる。雨自体に臭いはないが、オゾン、湿度が上昇することによって粘土から出されるペトリコールや、土壌中の細菌が出すゲオスミンが雨が降るときの臭いの元だと言われている。
通常でも雨水は大気中の二酸化炭素を吸収するため、pH(水素イオン指数)は5.6とやや酸性を示す。雨が亜硫酸ガスなどを大気中から取り込み、強い酸性を示すものもある。日本では目安として、 pHが5.6以下のものを酸性雨と呼ぶ。
比較的新しい雨に関する言葉も生まれている。明確な定義はないものの、微妙に異なった意味で使用されている。
水だけが降ってくる、あるいは透明な色をしている通常の雨とは違い、さまざまなものが雨と一緒に降ったり、色がついた雨が降ることがある。
突風を伴った嵐の場合は、土壌の成分を含んで茶色がかった雨が降ることがある。また、黄砂などの大気中の浮遊粒子(エアロゾルなど)を含んだ黄色がかった雨、赤みがかかった雨、砂や泥を含んだ雨が降ることもある。これらは時々起こる珍しい現象である。
これ以外に特殊な例として、ファフロツキーズと呼ばれる、ほとんど報告されないような珍しい雨もある。例えば、雨と一緒に魚やカエルが降るような現象が世界各地で報告されている。特に動物の雨は「レイニング・アニマルス」とも呼ばれる。
また、核爆発に伴う雨の例もある。1945年8月15日には、広島市で原子爆弾投下の後、高レベルの放射能を持つ放射性降下物を含む黒い雨が降った。この雨は触れただけで放射線障害の原因となり、二次被曝を引き起こした。核爆発では、大量の熱が放出されるため強い上昇気流が起こって雨粒が成長するとともに、雨に大量の放射性物質(粉塵)が混じり、雨自体も強い放射能を有することになる。これは長崎市の原爆投下後や、他の核実験の後においても確認されている。なお、この場合で雨が黒くなるのは粉塵に拠るものであり、放射線の作用で色が変化する訳ではない。
雨の概念や雨に対する考え方は、その土地の気候によって様々なものがある。イギリス、ドイツ、フランスなど西洋の温暖な地域(西岸海洋性気候の地域)では「雨」を悲しいイメージで捉える傾向が強く、いくつかの童謡にもそれが表現されている。
一方、雨が少ないアフリカや中東、中央アジアの乾燥地帯などでは、雨が楽しいイメージ、喜ばしいものとして捉えられることが多く、雨が歓迎される。
日本は温暖湿潤気候に属し国土における山地の割合が多いため雨が多く、また生業においても歴史的に水田稲作や林業をはじめとする山の生業に広く依存している。一方で大雨は河川を増水させ洪水被害を及ぼすなど厄災を及ぼすことも多く、治山・治水が行われてきた。
また、雨が少ない時期や乏水地域で雨乞い習俗が存在し、これは山の神と関係した民俗であることが多い。その他、雨は文化的モチーフにもなり、西洋と同じく雨に対する悲しいイメージもある。同時に、季節を感じさせるものとして四季それぞれの雨に対する感性が大きく異なり、古来より雨は多くの文学や芸術のモチーフに叙情的に描かれ、江戸時代の浮世絵版画においては歌川広重が交差する線の表現など多様な雨の表現を開拓している。
行友李風作の戯曲の中で月形半平太が、三条の宿を出る際に言った「春雨じゃ、濡れて参ろう」のせりふは春の雨に対する日本人の感性をあらわすものとしてよく知られる。
雨により、人間の活動が制限されることもある。野外で予定されていた行事が、雨天で中止になったり変更される例はよく見られる。ただし、「少雨決行」のように弱い雨の場合には雨天に関わらず行事が行われる場合がある。
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